【ネタバレ】ワールド・オブ・ライズ

CIAに雇われた元ジャーナリストの男が、ヨルダンで大規模なテロ組織を追跡する姿を描くサスペンス・ドラマ。ワシントン・ポスト紙のコラムニスト、デヴィッド・イグネイシャスの原作を『アメリカン・ギャングスター』のリドリー・スコット監督が映像化。テロ組織に潜入する主人公をレオナルド・ディカプリオが熱演するほか、ベテランCIA局員をラッセル・クロウが好演。 敵も味方も入り乱れた緊迫感みなぎるドラマに圧倒される。

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以下ネタバレ含みます!見る可能性のあるかた注意!




面白かった!

結論から言わせてもらうとなかなか面白いストーリでした。中東を舞台にテロの首謀者を追跡するCIA諜報活動員のロジャー・フェリス(レオナルド・ディカプリオ)とその周りで自分のエゴを満たすために協力あるいは敵対する人たちの化かし合いがなかなかよかったです。スリルを楽しむことができました。

でもやっぱりアメリカまんせーなんだよね

ハリウッド映画でアメリカをけなすものを作るわけはないんです。でもやっぱりアメリカがかっこよく描かれているのが気に食わない。というのも最初に「この作品はフィクションですが、今後実際におこることかもしれません。」って意味ありげにテロップをだすんですよ。つまり「この映画はリアルを追求したんだぞ!」と高らかに宣言して始まるんですね。でも、どうしても、やっぱり、リアリティに欠け、アメリカのプロパガンダ映画に見えてしまいました。

それは人物像の描き方に表れている

イスラム原理主義の指導者の、絶対の宗教家からはみ出る人間らしいエゴの描写はうまいなーと思いました。たとえば、新しい原理主義のグループとそのリーダーの存在を知ると(ま、これはすべてCIAがでっち上げたものなのですが・・・)真っ先に殺しに行く。つまり神の教えとか言いながら自分のリーダー的地位を脅かすものにはたとえ同胞であっても許せないという人間的エゴ。

一方のアメリカサイドのエゴも一応描画としてはあって、そのアメリカサイドのエゴを一挙に引き受けていたのがラッセル・クロウ演じるCIAのベテラン、エド・ホフマンなんですよ。彼は遠く離れたアメリカから子供の相手をしながら非人間的で冷酷な指示をだしているんですね。時にはロジャーさえも見捨てようとする彼の動機は中東の平和ではなく手柄を立てて出世すること。子供のおしっこの世話をしながら電話で人を殺す命令をする描写とかいいと思いました。でも、やっぱりこのエド・ホフマンはかっこよく描かれてしまうのですよ。ダーティ・ヒーローってやつ。でもアメリカのエゴ代表ならばとことん憎たらしくなってほしかったと思います。もっともっとリアルなエゴイストで。それがこの配役のロールではないのでしょうか。

そして一番よくポジションがわからなかったのが主人公のディカプリオさんです。彼は中東が心から好きだとか、誠実さがわかるような描写の一方で、罪のない中東の人たちを結構軽く巻き込むんですよね。そんな言動のちぐはぐが二転三転して出てくるから結局ポジションがつかめませんでした。彼を命がけにさせる動機の描写がほしかったです。

そしてハッピーエンドがリアルなわけなく

イスラム原理主義者が捕まってハッピーエンド、というのは現実からかけ離れた世界ですよね。彼の意思を受け継ぐものがまた表れて・・・これが現状ではないでしょうか。

総じて・・・

文句はいったけど、ストーリーや中東を舞台に繰り広げる化かし合いの描き方はなかなかのものだと思います。面白い映画ですね。だらだら言ってきたようにアメリカまんせーの映画なんですが、それを含めたこの映画自体がアメリカのリアルさを表現するメタファーになっているともいえるでしょうか。それに文句を言いながらアメリカ作の映画に慕ってしまう俺も含めて、ですが。

PS

いっこ伏線が回収できてない気がするのですが、俺が見逃しているだけなのでしょうか・・・?